三津五郎さんのこと

友人に「きっと好きだと思う」と言われて誘ってもらったのがきっかけだった。
それから1年に1回~2回ほど歌舞伎の舞台に通うようになった。

「なるほどこれが歌舞伎というものか」と、最初はお客さん気分だったが、「うっわー。また見に行きたい!」と思わせてくれたのは、「三津五郎さん」の存在が大きかったっと思う。
「三津五郎さん」言わずと知れた「十代目 坂東 三津五郎」さんのことである。
テレビでは「魚屋宗五郎」も「狐忠信」も見た。「うぬぼれ刑事」の「栗橋誠」も素敵だった。
シネマ歌舞伎で見た「江戸りびんぐでっど」の「四十郎」も好きだった。

さて、舞台では、どれくらい見ているのだろう。本棚から筋書きをひっぱりだした。
舞台を見に行くときは、筋書きを必ず買う。友人に言われて買うようになったが、この筋書きはけっこう役にたつ。歌舞伎の舞台背景とか考証とか。読んでいて楽しいのだ。
久方ぶり「ああ、そうだこの舞台はこうであった」と思わずあれこれ読み込んでしまった。

  • 2009年12月「野田版 鼠小僧」大岡忠相
  • 2011年6月「グレン・ギャリー・グレン・ロス」シェリー・レヴィーン
  • 2012年10月「通し狂言塩原多助一代記」塩原多助 道連れ小平
  • 2014年8月「たぬき」柏屋金兵衛

うむむむ。。。。もっと彼の舞台を見ていたような気がしていたが、思いのほか見ていない。
ただ、思い返すと、あれこれ楽しい。
当たり前の話だけど、舞台は自分の視点が自由に移動できるので楽しいのだ。
黒子の動きや、着物の柄、馬の脚とか(塩原多助には「青」という名の馬が出てくるのだ)自分の好きなものの動きを追いかけることができる。

「鼠小僧」の、「大岡忠相」は彼が、出てくるだけで一気に舞台が明るくなったような気がしたのを覚えている。「鼠小僧」はまるで現代劇のようで歌舞伎っぽくないところが私のお好みではなかったのだが、三津五郎さんは、ぱりっとして「良い!」と思ったのを覚えている。

「グレン・ギャリー・グレン・ロス」
何はともあれ、スーツ! 私はスーツ姿の男性が好きなのだ! とにかく男性のみの舞台で全員スーツ!
わーい。
舞台の装置が派手で楽しかったのだが、とにかく三津五郎さんのスーツがうれしくて、わくわくしていた。とにかく色っぽくて素敵だった。
久しぶりにパンフレットをぱらぱらめくってみて、稽古場のラフなジャケット姿を発見! それもよし! 笑顔かわいい。

「塩原多助一代記」
これは三津五郎さんが出ずっぱりなのだ。
馬の「青」がとにかくかわいくい。人間が前足、後ろ足を演じているんだけど、巧い。
実直な「多助」もいいのだが、悪人の「道連れ小平」も格好いい。
とにかくこの芝居は、三津五郎さんをおもいきり堪能できた。

「たぬき」
「ここで無理をしなければもしかして」という想いが頭をよぎる。
勘九郎さんが故勘三郎さんにそっくりで、なんとも言えない想いにとらわれたのをおぼえている。舞台をみているときには全然気が付かなかったけど、ネットやテレビでの三津五郎さんの顔を見ればげっそりと病み衰えていた。
舞台での姿はなんと凛々しかったことか。私はそれを単純に楽しんでいた。
それは、彼の気骨のなせる業だったのだ。
なんと私は単純だったのだろう。ただ彼の芸を眺めていただけだったのだ。
すごいすごい。三津五郎さん格好いい!と。

わーん。
泣けてきた。

なぜ彼を天国に連れて行ってしまったのだよ。神様。
彼は、まだこの地に居てお芝居をしていてほしかったよ。

奥ゆかしく、控えめで、品のいいところが好きであった。
粋で、きりっとしたところも好きであった。
もう、彼の芝居が見れないのかと思うと悲しいよ。

ご冥福をお祈りいたします。