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七星天分肘(koyukikimiが作った後半)について

ハル(@sakuraSoftware) さんのマーチという小説があります。
マーチ!x2 七星天分肘
という小説の後半部分を承諾を得て書いてしまいました。

こちらです。

ハル(@sakuraSoftware) さんの七星天分肘の前半部分はこちら

本物のハル(@sakuraSoftware) さんの七星天分肘の後半は
今年の九月から来年の一月くらいまでの間に「マーチ!x2」が出版されて、そこで読めるでしょう。。
楽しみですねー。。

続きは。。。どうなのでしょうか???

ハル(@sakuraSoftware) さんのマーチはこちら↓

マーチ!
マーチ!

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sakuraSoftware (2013-07-06)
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ひとさまのスタイルにはなり切れませんでした。
真似したのは英字を半角にしたぐらいです。
字下げだって全角空白という自分パターンを貫いてしまいましたし、

私が書くとどうしても暑苦しーくなるんですけど。
それは個性です。
それがにじみ出るから面白いんだろうと思って書きました。

勝手にキャラまで作っちゃったし
・・・受付のおばちゃん。。
私も含めて今まで職場で会ってきたいろいろなおばちゃんが五人くらいミックスされています。。
台詞一個しかないのに・・・。

ともあれ楽しかったです。

七星天分肘(koyukikimiのつくった後半)

 駐輪場は、隣の棟の一階に三棟分、まとめて配置されている。一階部分の半分を駐輪場が占めているというぜいたくなつくりだ。

 つまり、無駄に広い。

 でも二台、三台と持ち込む人もいて、自転車はいつもぎちぎちに詰め込まれている。そのぎちぎちにおかれた空間が苦手でうちの自転車は折りたたみ。玄関に置いてある。
 だから駐輪場に用があるわけがない。
 歩きながら考えている。どうして駐輪場?
 そこがよくわからない。

「お姉ちゃん……」
 駐輪場を覗き込むと、薄明るいライトしか見えなかった。
 オレンジ色の光を頼りにおずおずと進むと、奥に人影がぼんやりと映し出されてくる。お姉ちゃんでもアサコでもない。男だ。
「……返してもらおうか」
 さっきお姉ちゃんにアスファルトにたたきつけられた男とも違う。
 ダークスーツ、ノータイ。服装だけなら職場でよく見るタイプ。でも目の輝きと無精髭、髪の毛のぎらついた感じが、現実から浮遊している。
「……返してもらおうか」
 男は同じ言葉を二度使った。何だかよくわからないが、ヤバイという感じだけがひしひしと伝わってくる。
「何を?ですか?」
 間抜けな返答になった。
 私はさりげなく、後ずさりをする。なんか怖い。なんか嫌だ。逃げたい。わけがわからない。
「んあ!?」
 男はすごんだ。
「お前に渡したって聞いたんだよ」
 アサコが男ともみ合っていた姿を思い出す。何かトラブルにでも巻き込まれたのだろうか。
 男がいきなり距離をつめた。腕をつかまれた。
「痛っつ」
 がくがくとゆすられた。
 怖い。声もでない。
 と、その時だ。
「君、大丈夫か」
 背後から声がかかった。一人の背の高い男が駐輪場を覗き込んでいた。白いシャツが目に入った。
 私がダークスーツの男ともみ合っているように見えたのだろう。つかつかと駐輪場に入り込んできた。
「なんだお前」
「通りすがりのものだ」
 ……通りすがりって、めったに日常会話では使わない言葉だ。
 急に恐怖が消えていく。
「すっこんでろ」
 ……この言葉もドラマでしか聞かない言葉だ。
 ダークスーツ男と白シャツ男はこの駐輪場内で私を挟んで、にらみ合った。ダークスーツ男と白シャツ男。ワイルドなタイプと品方向性なタイプ。タイプの違う二人の男。そして、事件に巻き込まれていく私。
「……大丈夫?」
 白シャツ男は、私に向かって聞いた。笑顔を私に向ける。今日一番の笑顔を君に向けたよ、って顔をしている。
 うっわー。気持ち悪い。
 緊急事態だというのに私はそんなことを考えている。
「心配しなくていいよ」
 ……なんだよソレ。
 私の思惑を知ってか知らずか、男はまた満面の笑みを見せた。

 芝居がかっている。そう思った。
 ……ちょっと待って。
 私の頭の中に、二日前に見たドラマがフラッシュバックした。
 受付のおばちゃんにDVDを押し付けられたのだ。やたらと決めポーズをとる金髪のおじさんが「悪はぜったいゆるさない」的な台詞を吐くのだ。突っ込みどころ満載で、突っ込むために見るのだと薦められて借りてみたのだが、そんな楽しみもできずに、微妙なポジションを保ったまま、記憶にちょこんとおかれた代物。
 それが頭の中でくるくると再生する。
 …あの話に似てる…。

 私は大声をだした。
「お姉ちゃん、アサコ! いるんでしょ!」
 あの話は、気弱な会計士が、バーで女の子をかばってケンカをし、その女の子と逃避行というストーリーを兄弟に仕組まれて演じさせられるのだ。願望を実現することで自信をつけてほしいという理由で。
 ふらりと細い姿が浮き上がった。さらさらとした髪がついてくる。お姉ちゃんだ。
 駐輪場の奥にいたらしい。気がつかなかった。
「コレ、いくらかかってるの?」
 あのストーリーでは、たくさんの俳優を雇っていたし、バーは貸し切り。兄弟の願望達成のためにとんでもない額を投じていた。
 私の推測はある程度は間違っていなかった。私の傍らの白シャツ男と、ダークスーツ男は想定外の事態という様子でぼんやりと立ち尽くしている。
「私は何も知らないけど」
 お姉ちゃんの横からひょこりとアサコが顔をだした。
 頭の上で腕を使って大きなバツ印を作ってみせる。そんな仕草も芝居ががって見える。つまり私は何も信じられなくなっている。この事態に関してだけは。
「すみませーん。終了でーす」
 お姉ちゃんは私の腕をつかんでいたダークスーツの男の手を引きはがした。
 白シャツ男とダークスーツ男は何事もなかったかのように
「お疲れ様でしたー」
「お疲れさまっす」
 口々に挨拶をかわしている。見れば階段のうえでアサコに絡んでいた男も駐輪場の入り口からこちらを覗いている。「お疲れさまっしたー」
「お疲れさまです」
 私も、挨拶されれば、意味なく頭を下げてしまう。
 そしてアサコと男たちは駐輪場から去って行った。
 お姉ちゃんは何事もなかったかのように自室に戻って行く。
 私は立ち尽くす。
 結局、何だったの?
 灰色の猫が駐輪場の手すりから顔をだし、すべて見ていたよと言いたげに、にゃあと言った。

 私の想像はほとんど間違っていなかった。
 違っていたのは、お金を払っているかいないか、だけ。
 アサコの取引先の会社の新企画。「ミステリアス・イベント-それいけ非日常!いつもと違う映画みたいな体験をしてみませんか? ドッキリする企画をお友達にプレゼント!」
 そのお試しキャンペーン。企画段階のサンプルだったのだ。
 たしかにお姉ちゃんは、一円も払っていない。

 お姉ちゃんは何も聞くなと言いたげに、アサコからのメールを見せた。細かな台本だ。そういえばプロフィールの写真の件でお姉ちゃんをアサコに紹介したことがあったっけ。うっわー、同じ職場の奴が、私の退社時刻をチェックしていたのか。
 世の中信じられない。

 ちなみにあの後の展開としては、私はダークスーツ男の追撃をかいくぐりながら、白シャツ男と逃げ回る。白シャツ男は私をかばって、ダークスーツ男に刺される。。。。
 誰よ。台本書いたの。

 二日前に、乱雑に投げ出されたDVDの山を眺めていたお姉ちゃんの姿を思いだす。「何これ」とも聞かずに、髪の毛をクリップでまとめながら、DVDの表と裏をしげしげと眺めていた。
 駐輪場をわざわざ指定したこと。
 お姉ちゃんは、私がこの企画を信じないことなんて最初から分かっていたんだろうなあ。

 それでもどうして、この企画に乗ったのか。
 DVDを貸してくれた受付のおばちゃんが言ってた。
「馬鹿だなーと思っても、見てる時だけは夢をみるのよ」
 お姉ちゃんも、アサコも、受付のおばちゃんも、私の退社時間を教えた同僚も私に夢をみてほしかったんだろうか。

 次の日の朝、アサコはチリパーラーのテイクアウトを持ってやってきた。オープントーストとゆで卵、オレンジジュース、コーヒーのセットだ。
 三人分ある。
 悪趣味だよ。しかも芝居がかってるからすぐばれるよ。あれ信じる人いるの? アサコに言いたいことはいろいろあったけれど、美味しい朝食と一緒に飲み込んでしまった。きっとアサコもいろいろあるはず。私をサンプルにしてアンケートなり報告書をまとめて取引先にお送りするのだろう。
「私はこういう企画は好きになれないな」
 お姉ちゃんの声は冷たく、なんの感情もこもっていなかった。
 アサコは、黙り込んだ。